#04 歩行免許 | Under the girder
2019年に横浜から東京に転居して,日常生活で一番印象的だったのは「東京,自転車多いな」ということ.
横浜在住時にはUberEatsが今ほど流行っていなかったことを割り引いても,明らかに東京のほうが街を走る自転車が多い.多分,横浜は坂が多すぎて自転車のメリットが少ないからだろう.振り返れば大学入学の時に買った自転車は,横浜のあまりの坂道の多さに使うのをやめてしまい,アパートの前に止めていたら知らないうちに消えていた.
一方,武蔵野台地に位置する東京・杉並区は坂道も少なく,自転車に向いた地形だ.そんな自転車王国を歩いていると,駅前の雑踏をすり抜けるように走っていく自転車に遭遇して,ヒヤリとする瞬間は珍しいものではない.
UberEatsのような配達サービスの隆盛と歩調を合わせるようにして,「自転車悪玉論」が勢いを増してきたように思う.「自転車使用を免許制にしろ」という声まで出てきてしまうのも,感情的にはさもありなん,という感じ.
一方で,歩行者の“歩き方”も大概なのではと思うことも,同じくらい多い.例えば,後ろの様子を全く気にせず立ち止まったり,ひどい場合には突然反転して逆方向に歩きだしたり.車道と歩道のわかれていないような道で,この世に車なんてものはないかのように突然道を渡ったり.
おおよそ「脳みそを使っていない」歩行というのが,実はあまりにも多い.
歩行者目線から言えば,自転車より歩行者のほうが圧倒的に多いので,実は自転車にヒヤリとさせられることよりも,歩行者にヒヤリとさせられることのほうが多い.
まあまあ混み合ったエスカレーターを降りて一歩目に突然立ち止まる人とか,生み出しうる被害で言えば下手すれば群衆すり抜けの自転車よりも多い.
そして何より都心は人が多すぎる.やってくる自転車を警戒することはできても,無数にいる歩行者がランダムに起こす「脳みそを使っていない」動きを警戒していると頭がおかしくなってしまう.
自転車を免許制にするより,いっそ歩行を免許制にしてくれないか,と,混雑した駅のコンコースを歩きながら,そう思っている.