新宿駅西口地下広場が好きな理由、そして今好きでない理由
自分は元々は東京をうろちょろするときの拠点は川崎で,それ故に東京の「東側文化圏」に触れることが多かった.意外と川崎から新宿って出るのが面倒なのだ.そしてそれを引き継いでか,横浜に住んでいるときも東京に行くときは東側に出ていくことが多かった.典型的には秋葉原で,あとは帰りがけに東京駅地下にあった飲む酢のお店によく行っていた.
そんな「東側世界」の住人だった自分が西側,特に新宿によく行くようになったのは就活を始めてから.どういうわけか就活で行った企業はどちらかと言うと新宿所在のところが多かったように思う.キラキラビジネスマンの代名詞である丸の内には数えるほどしか行ったことがない.湾岸エリアに至っては一度も行かなかったような気がする.
就職して荻窪に居を移してからは,買い物に行くならもっぱら新宿だ.秋葉原のヨドバシ行きたいな……と思いつつ新宿で済ませることが多い.秋葉原って荻窪からだと微妙に遠いんだよね.そういうわけで最近のホームグラウンドは完全に西側にシフトしている.
そんな「西側社会」の盟主新宿の,特に西口側を彷徨いていることが多い.西の西である.そしてこの「西の西」を彷徨うにあたりほぼ確実に通ることになるのが「新宿駅西口地下広場」なのだが,この場所は都内で好きな場所を挙げたら結構トップにランクインするくらい気に入っている.
何が良いかと言うと,人は都内では唯一,新宿駅西口地下広場では「分かり合える」のだ.
新宿駅西口地下広場には都内の徒歩空間にしては珍しいほどに広い.とても広い.幅が広いだけではない.面的に広い.
よって,行き交う人と譲り合いながら歩ける稀有な空間なのだ.「あ,あのおっさん多分こっちに行くな」と自分は思う.一方でおっさんも「あいつ多分あっち行くな」と思う.故に自分も避けて道を空け,おっさんも同じく道を空けてくれる.大概人とわかり合える感性のない自分が,人とわかり合える余裕のない東京で,ほぼ唯一分かり合える空間,それが「新宿駅西口地下広場」なのだ.
ここ以外では人は分かり合えない.池袋とか最悪である.通路が狭すぎて,万人の万人に対する闘争状態に満ち満ちた,ホッブズ的な世界観,それが池袋だ.1600年代みたいな世界観である.
ただ残念なことに,新宿駅西口も再開発が始まり,都内でよく聞く「工事中のため通路が狭くなっております」というアレが襲来した.地下広場もその煽りを受けて結構狭くなってきた.この前は久しぶりに西口地下でおっさんと分かり合えなかった.これを「西口地下の池袋化」と呼んでいる.
数少ない人と分かり合える空間がなくなった今,悲しみを抱えつつ,精神的ファイティングポーズを決めながら西口地下を歩いている.早く工事終わって欲しい.