Bluelight Sonata

2022-03-16

#11 蛍 | 根暗草子

At the estuary of the Yoshino, Tokushima.

自分は精神的な静摩擦係数が非常に大きい.動かざること山の如し.「案ずるより産むが易し」と知っていてもなお,案じて案じて案じて,案じすぎて無駄に気疲れしている.その上,案じすぎて期を逃してようやく産んで,中途半端な形で終わることが多い.

2022年は意識的にそれをやめようとしている.


コロナ禍でいつ何時人生が終わるかわからなくなったとか,狂った指導者率いる国に侵略されて国が滅ぶかもしれないとか,時事的センチメンタルに引きずられているのかと言えば,そういうわけでもない.もっと卑近なところで,もっとフットワーク軽く動かねば,と思うに至った.

端的に言うと,老いを感じる.一応まだ20代なのだが,自分の身体にこれまでにない変化を感じることが明らかに増えてきた.

マスクを紙箱から取り出そうとしたら,紙の断面に指を引っ掛けて血が出て,傷は丸3日治らなかった.ふと洗面所で鏡を見たら前髪に白髪が2本あって,それを抜こうと鏡に近づいたら鼻毛にも白髪があった.ポテチを食ったら胃がムカついて吐きそうになった.体重が低い以外問題なかった健康診断で血圧に気をつけろみたいなことを言われた.寝ても寝ても疲れが取れないし,昼間も眠い.


27歳になり,まあアラサーと言っても差し支え無かろうという歳になって,急にボロが出始めたのでちょっと焦っている.自分が思い描いていた人生のスピード感に対して,身体が明らかに先行している感がすごい.そしてその身体と意識との差がどんどん広がっていく感じがある.

これは非常に怖い.このままどんどん身体の老化だけ先行するとして,意識も老化する頃に身体はどこまで先に行っているのか.


こうなってくると人生のプランも変えざるを得ない.今まで根拠もなく,健康な身体で定年を迎え,ごきげんなジジイとして老後を謳歌してやろうと,大人の休日倶楽部とかのカード作って旅行を楽しんじゃおう,と思っていたのだが,そう悠長なことも言っていられない.

孵化するまでが長い蛍のように,雌伏の時として社畜をやり過ごして,せめて小金くらいは貯金して,老後に輝かしい人生を楽しんじゃおう,と思っていたら孵化できませんでした!みたいな未来が普通にあり得るということを,ようやく実感を持って感じた.


よって,土日とは言え疲れたしなあ,とか老後のために貯金しないとなあ,とかちょっと季節を逃しかけてるからこれは来年にしようかなあ,とかそんな眠たいことを言うのはやめて,後先考えずハチャメチャするようにする.

これは一種のアイデンティティ・クライシスで,良くも悪くも「石橋を叩いて壊す」のが自分の特徴だったわけで,それをかなぐり捨てようとしている今,将来振り返ってそれを後悔するのかしないのか,はまだよくわからない.

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