Bluelight Sonata

2024-02-29

04. それは多分曇りだったから | Letter from Havana

A cloudy day, La Habana, Cuba.

ハバナの北側,メキシコ湾に寄り添って伸びるマレコン通りを歩く.一応,カリブ海らしい夏めいた晴れ空を期待して来たのだが,「旅先を曇らせがち」問題は日付変更線を越えた西半球までつきまとってくるらしい.ガッツリと曇り空が背景となっている.



パルケセントロの北側の一帯は,オビスポ通り周辺のザ・観光客向け繁華街という雰囲気とは少し変わった雰囲気になる.マルティン通りの東側には外資の高級ホテルが建ち並び,一方で西側には旧市街にはないまた別のローカル感が漂う一帯になっている.

その更に北側がハバナ旧市街エリアの北の果て,プンタ要塞になる.この一帯には,旧市街中心の賑やかな客引きとも,マルティン通り西側のローカルエリアの住民ともまた違った人たちが闊歩している.たかりである.


まずは1組目.学校の先生をやっているという男性の方.……今日は平日で,真っ昼間なんだがそんなことあるか?と思ったが,社会主義だからそうなんだ,とのことである.本当か?嘘と断ずるほどの知識も持ち合わせていない.

曰く,目の前の運河の向こうにある要塞はモロ城といって,こっちの海はメキシコ湾で,あの向こうにあるのはアメリカだ.そう,マイアミだ.こっからボートを漕いで亡命していくキューバ人だっているんだぜ.知ってるか?今,キューバは全然モノがなくて.歯磨き粉手に入れるのも一苦労だ.というわけで何でも良いので何かくれないか?

……ということである.正直マイアミの話が出てきたところで,その後の展開は読めていた.メキシコ湾の話までは「たかりの可能性80%」くらいと踏んでいたが,「マイアミ」は確定演出である.亡命→物不足→たかりのルートが見えた.リアルADVゲームみたいな展開である.

そこまでわかっていて何故たかりと会話を楽しんでいるのか?多分,曇りで時間を持て余していたからだろう.ちなみにハバナのたかりはみんな結構流暢に英語で話しかけてくる.キューバの公用語はスペイン語なので母語ではないのだろう.かくいうこちらも英語ネイティブではない.プンタ要塞の脇には,非ネイティブな英語でたかるキューバ人と,非ネイティブな英語でたかられる日本人がいる.


2組目の方.「写真撮ってくれない?」という観光客のご夫婦……なのだが渡されたスマホのメーカーがよくわからない感じで,ここでフラグがたった.やられた.観光客装った現地人のたかりだった.とりあえず頼まれたので写真はしっかり撮ってあげた.

2組目の観光客……のご夫婦は曰く,どっから来たの?ハポン?アジア人でキューバに遊びに来る人は珍しいよ.すげえ珍しい.実は俺たちはハバナでカサをやっててさ.そう,民泊さ.君はどこに泊まってんの?え?旧市街の南?そうなのか.どうだいハバナは?

もう途中で「早くたかれよ」と思ったのだが,一向にたかって来ない.話の流れ的にレストランかどこかに連れて行って奢らせるかボッタクるかがゴールな気はするのだが,一向に踏み込んでこないので全くゴールに近づかない.ADVゲームだったら間違いなくバッドエンドである.そこまで思っていても何故しばらく話に付き合っていたのか?多分,曇りで時間を持て余していたからだろう.


3組目の方.曰く,Yo! Bro!お前のこと知ってるぜ?南のほうのホテルに泊まってる奴だろ?なあ聞いてくれよ,今夜そこでパーティーがあってよ,

というところまでで適当に手を降って会話は終わらせてもらった.2組目との会話でちらっと漏らしてしまった「南のほうに泊まってる」という話が3組目に伝わっている.彼らはグループでたかっていて,スマホでカモの情報を共有するスタイルでやっているのだろう.なんて現代的なたかりスタイルなんだ,と逆に感心してしまった.



3組目だけ何故ちょっと塩対応だったのか?それは多分,ちょっとずつ晴れ間が見え始めてきたからだと思う.

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