旅情なき始発駅
27年生きてきて,東北にしぶとく残っていた未踏の県,秋田.わかりやすい成果を求めて,東北から未踏の地を消すべく秋田に行ってきた.
秋田に行くにあたって,新幹線を使うか飛行機を使うかはこれまでにないほどに大いに悩んだ.新幹線で約5時間,飛行機なら羽田での待ち時間をギリギリまで削れば約4時間.羽田での待ち時間を入れたら所要時間はトントン.費用面も前日までにチケットを取れば大差がない.
結局,田沢湖に行くことにしたので──そう,「秋田に行く」が先行してから行く場所を探したのだが──,新幹線を使うことにした.勢いで年会費を払って普通のものより少し良いJALカードを使っているのだが,肝心の使う機会がない.
学生の頃はみどりの窓口に並んでせっせと学割の切符を買っていたが,学割を使えない今となっては窓口に行くことも滅多になく……どころか,モバイルSuicaで新幹線に乗れるようになり,最早紙の切符を持たずに新幹線に乗るのが当たり前になった.
切符ケースから切符を取り出して改札機に通す,これから旅に出るぞ,っていう高揚感をもたらす行為がなくなってしまったのは,少し寂しくもある.ついに東北の未踏県を潰しこむ旅に出ると言うのに,改札はスマホをかざして通るだけで,通勤のときと何ら変わらなくて,そこには旅情というものがない.
そう,旅情がないと言えば.最近の新幹線は──というか,東京始発の新幹線は──ギリギリにならないと列車に乗り込むことができない.上野でも大宮でもなく東京からわざわざ新幹線に乗るのは,出発待ちの始発の列車に乗るという,これまた旅感のある行為を求めてのことなのだが,3分前にようやくドアが開く現状,慌ただしさが勝る.
本当は一旦車内に荷物を置いて,売店で駅弁を買ったりしたいんだけど.こうも慌ただしいと,それこそ慌ただしく荻窪で折り返していく丸ノ内線に通勤で乗るのと変わりがなくて,そのあまりの旅情のなさは辛いものがあるな.