ひとりで産婦人科に行った異常独身男性に、この世で1人でできないことなんてないのでは?
「ひとり○○」の難易度リスト,みたいなものが話題になることがある.
「ひとり○○」耐性が割と高い自分からすると信じられないことに,連れションでなければトイレに行けないとかいう末期的な ───と自分は思うのだが,多分先方はこちらのことを末期だと思っているのでお互い様だ─── レベルでひとり行動に抵抗を感じる層もいるらしい.
他にも「ひとり旅はできる」「ひとり回転寿司は行けるけど焼き肉は無理」「ひとりディズニーは厳しい」とか,思い思いの難易度価値判断がある.
自分は「ひとり○○」耐性が割と,というかかなり高い.一人旅は言わずもがな,やったことこそないが回転寿司も行けるし焼き肉も余裕だ.
ひとりディズニーも今の所あまり興味はないが,行こうと思えば普通に行けるだろう.グループだらけの花火大会とか,カップルだらけの夜景スポットでカメラを構えて仁王立ちしているのと比べれば,ディズニーなどマリオの1-1レベルに思える.
───というように,自分は「ひとり○○」難易度リストのかなり上のほうまで軽々と飛び越えていけると思っている.というか「ふたり○○」をする選択肢がまずないので,「ひとり○○」に抵抗があるんですぅ~なんて言っていると,マクドナルドを食って寝る以外のことができなくなってしまう.
そんな自分に立ちはだかるのまた別種の壁がある.「そもそも1人だとやる機会がないよね」というケースだ.「する/しない」とか,「したい/したくない」とかそういうレイヤーではない.そういう判断をする手前で足切りされるパターン.
その最たるものが「産婦人科に足を踏み入れる」だ.男性の自分にとっては,パートナー無しで訪れる用事がない.「産婦人科に足を踏み入れて,何もせずすぐ外に出る」とかいう,さすがの異常独身男性も真っ青の頭のおかしい行動を許容しない前提に立てば,当然に「ひとり産婦人科」はあり得ない.
そして,自分はこれまた当然のようにパートナーができない世界線を生きているので,ひとりどころか2人以上ですら足を踏み入れることのない場所,それが産婦人科である.
そんな敵地に先日1人で乗り込んできた.
というのも,インフルエンザの予防接種を受けるべく,杉並区からもらった接種できる医療機関一覧をもとに「在庫あります?」という電話をかけ続けたものの,需給が厳しいらしく「無理です」という返答続きだった中,唯一「ありますよ」と言ってくれた病院に行ったところ,一応内科はあるのだが「内科・産婦人科」だったというオチ.
言い訳するともらった一覧には産婦人科併設とも書いてなくて,あたかも「わたし内科です」みたいな顔をしていたので,普通に内科だと思っていた.現地について初めて事実を知った,という次第.
もう現地に着いてしまったのでそのまま突入して予防接種を受けてきたわけだが,内科併設とは言え産婦人科があることで女性の患者しかおらず,妊婦さんもまあまあたくさん居て,「ひとり○○余裕です」な自分でも割とギリギリのラインだった.「自分は石ころ」と思いながら待合室で息を潜めたのだが,凄まじい異物感は否めない.
ワクチンは無事接種して,病院を後にするときは謎に晴れやかな気持ちだった.これよりハードルの高い「ひとり○○」なんて他にないという確信がある.もう何も怖くない.
ちなみにこれは2020年の話なのだが,2020年のワクチン接種で「ひとり産婦人科」にも免疫がついているので,2021年は産婦人科併設であることを知りながら同じ病院でワクチン接種した.まともな男性はここで予防接種を受けないので,どうやらワクチンの在庫が潤沢らしく,当日思い立ってワクチンを接種するにはちょうど良いからだ.
こうしてただでさえ異常独身男性だったところ,産婦人科の診察券を持っている異常独身男性にランクアップした.多分来年も診察券を持ってワクチンを接種しに行くだろう.